人種問題

よほどの海外旅行好きとか、国際関係の仕事にでも従事してない限り、多くの外国人と接するのはむつかしい むろん、国内にいても海外からの観光客が多いから、多少は接点もあるかもしれないが、数は限られている その割に、外国人の悪口を言う人が多い

 実際に会ってもいないのに毛嫌いする人がいる ただよく聞けば風評のケースが大半

 特にお隣の国の人への批判が多い 日本にもたくさんの人が住んでいるので、余計に話題の上る で、実際にいやな目に遭ったのか、というとそうでもない 新聞で読んだとか雑誌で見た、ワイドショーで聞いた、友人から聞いた、というのが多い

幕末まではそんな偏見はなかった むしろお隣の国は古来より、日本の政治や文化の先輩で、多くの学者や技術者が日本へやってきている 天智天皇桓武天皇などの政治のブレーンンはみなお隣から来た人たち 中にはユダヤ系の人もいた

 維新以降、西洋列国に伍していくために富国強兵策をとった明治政府は、欧州の植民地政策で弱体化していた隣国に乗り込み、その支配下に置いた ここに主従の立場が逆転、日本民族がアジアの頂点に君臨するという誤った思想が蔓延、多くの国民が隣国の人を蔑視するようになっていった 高々30年、40年の間に過去一千年以上にわたって根付いていた価値観が見事に覆された それは維新政府の大きな政策の一つ、国民教育の普及の結果である 全国津々浦々に小学校、交番、郵便局を設置した成果の一つが

義務教育の普及で、国民の洗脳に大いに役立った 神国日本のイメージ化を徹底して、隣国などをその下に見る、という思想の徹底である 少なくとも江戸時代の半ばまでは大名といえども天皇の存在をあまり認識していなかったし、庶民などは全く蚊帳の外で、京都を中心としたごくわずかの狭い地域で「天子さん」と親しまれていた程度が実情  そこへいきなり徳川将軍をはるかに凌駕する大権威が出現、しかも神として君臨することになった あれよあれよという間にこのにわか権威は頂点に達し、国民はその前にひれ伏した 実に見事な薩長維新政府の政策である 天皇神格化と隣国などアジア民族を蔑視する風潮もこの時併せて発生した 

 今、ネトウヨなる狂信的な排他主義者がいるが、これらは維新政府の吹き込んだ日本民族優位主義の残党に過ぎない 

 ついでに書けば、現行憲法は欧米人の入れ知恵で作成ししたもので、日本人の手で改めて作らなければならないと言っている一派がいるが、かの帝国憲法も維新政府が欧米の知恵を借りてまとめたもので、これまた同じ論法で言えば借り物でもある 

 古来、日本人は多くを大陸から学び、それを採用しつつも独自のものに発展させてきた 文字や宗教、政治や経済、科学、芸術…多くの分野で大陸から学び、アレンジして今に至る ただし、現行憲法象徴天皇制と交戦権の永久放棄は幣原喜重郎の発案であることを忘れてはならない